3 COMPASS 羅針盤

世間が葉月に入ったが
この暑さから
8月にこんな美しい名前を付けた方も戸惑うでしょう
蝉のミーミー声が風物詩になる季節

さてと「営業中」の看板を掲げてこよう
今日はどんなお客さんが来るかな

ピンセンサーの女の子、覚えている?
あの子が尋ねて行ったフクロウ博士が今回の主役

読書好きとして知られているが
町中図書館の館長の話によると
最近もっぱら
ヨーロッパ大航海時代に関連する本を借りている
もうかれこれ20冊近く読んでいるらしい

さっき店内に入った時にちらっと見たが
手に持った分厚い本のタイトルはたしか『ペスト』だった
一般人が理解できない脳の仕組みって
この世に実在しているものだな

「今日のシェフ気まぐれスペシャル」を頼んでくれた
最高のお客さんだ
私は自作の歌を口ずさみながら
台所でクリエイティブタイムを楽しもうと意気込んだ

ロメインレタスを切り始めて間もない頃
おっと
窓の景色が蒼々とした森から際限ない大海原になっているじゃないか
カモメが飛んで
少し潮風が通り抜けた
鼻に湿った空気が入り込んで
なぜか懐かしいと思った

これはこれは
あまりにも意表を突いた変化だから
私はその場に釘付けになった

このレストランは
海の波に乗るために作られたのではないから
少し水漏れが心配だ

博士は席から立ち上がって窓際へ行った
ちょうど目の前に立派な船が一隻あって
国旗を見ると、あれはポルトガルの船だ
乗組員の一行がせかせか動き回る姿が見える
うーん
何だが暗いイメージを受けている
何かから逃げ出そうとしている様子

博士は心得たような微笑みを浮かべ
グレーのベストのポケットから
羅針盤を取り出して
しばらく思索に耽る

今時
羅針盤を持ち歩く人なんて
始めて見た!

もう一度申し上げるが
このレストラン
舵もなければ、帆もない
船長ももちろんいない
だから進行方向は変わりっこないに決まっている

でも、どういうわけか
まるで魔法にかけられたように
外の景色が回転し始めて
浪の白いしぶき 緩やかな上下
間違いなく店が動いている
もっと正確的に言えば
海の上を滑って向きを変えている
あのポルトガルの船は徐々に視野から左へ消えて行った

幸い台所では大きな揺れもなく
カレーを煮込んでいるコンロの火は
依然として最高の調子を保っている

気持ちよい振動に
うとうと居眠りに落ちそうな夢心地
ずっとこのまま続けてほしいと思ったら
急に高速船のようにスピードアップ
私はぱっと目を開き飛び上がった

空も見えないくらい
外の波が高く荒れている
先の水面よりもっと濃い藍が窓に映った
店内のワインが心配で見まわしたら
棚は相変わらずの安定感

この激しいスリリングは瞬く間に止まった
どうやら時間をスキップしたようだ
窓の外を見ると
おや、あれは先のポルトガルのキャラベル船じゃないか
ただ結構な古びた感を帯び
船員たちの肌色もだいぶ日焼けした
でも
彼たちの表情はさっきの不安から一変

満足 充実 幸福 喜び 調和 安心

あとなんだ?
こういったポジティブワードを並べても
表しきれない輝きがある

何が起きたのかな
船全体何か大冒険したような老朽の前兆が見え
帆に補修のパッチさえ所々ある
きっと長い間大陸に戻っていないのに
なんでそんな表情ができるのか

気になって思わず博士に話しかけた

博士は優しい口調でこう教えてくれた

「あの人たち、
不安と恐怖を乗り越えて
自分の羅針盤で新世界を見つけたから
もう誰にも何にも翻弄されないさ」


そう言って博士は手元の羅針盤をしまい
デッキに立った一人の少年をじっと見つめてから
席に戻った

博士の言葉
なるほどと言えるまであと一工夫
これから少しずつ腹に落とされていくでしょう
思わず自分のポケットを触ってみた
なんと
あるはずがないもの、羅針盤が一つ
ポケットの中に入っていた!
やれやれ

鳥の鳴き声が聞こえ
あ、森に戻った

博士はその後
静かに夢中に料理を味わって
何度もぽろっと出てきた「おいしい」が
最後の賛辞と思う
心が温まってきた

博士は
レストラン内だけでなく
どこに行っても
時空を自由に操ることができると感じた
ただ食事中はちゃんと普通の時の流れに戻して
味蕾の変化を満喫する

そのほうが断然おいしいに違いない
これはシェフとしての自信と勘だ

深くお礼をして博士は帰っていった
彼の足元を見ると
小振りにはしゃいでいる
今にもステップし出しそうな
抑えきれない興奮感動が漏れている

奇妙なお客さん
不思議感満載の紳士
博士と呼ばれているが
魔法使いのほうが相応しいかもしれない

私の羅針盤
どこを指しているのかな



「羅盤」

時序進入桂月
這熱度
恐怕賦予8月這如詩詞般名字的文人也該傷腦筋
鳴鳴蟬聲終日襯景的季節

掛上「營業中」
今日不知道會有什麼樣的客人前來

還記得那位頭頂長著奇跡偵測器的女孩嗎?
女孩前去拜訪的貓頭鷹博士是這次故事的主角

學識豐富的博士以愛看書聞名
聽城裡圖書館的館長說
博士最近似乎迷上歐洲大航海時代
已經閱讀超過20本以上的相關書籍

剛剛他進店裡來時我偷瞄了一下
他手裡拿著一本厚厚的名為『黑死病』的書
哎呀
這世上還真的有常人無法理解的思考迴路

博士點了「今日主廚心情點播餐」

真是好客人
我哼著自創的歌曲
準備大展身手創作

剛開始切美國萵苣沒多久

窗外景色變了
從鬱鬱蔥蔥的森林變成一望無垠的大海
海鷗飛翔著
帶著鹹味的海風拂捎而過
鼻子裡聞到充滿濕氣的味道
不知為何竟覺得熟悉

這突如其來的轉變
讓我愣在原地

這餐廳可不是為了乘風破浪而建的
怕有漏水問題吶

博士起身前往窗邊
瞧 遠方有一艘氣派的船隻
看國旗,是葡萄牙的船
船員們各個忙碌地奔波著
但怎麼說呢
看上去氣氛很灰暗
像是急於逃離什麼可怕的東西似的

博士露出一抹意味深長的微笑
隨即從灰色西裝背心的口袋中拿出一個羅盤
接著陷入了沉思

這時代
竟然有人會隨身攜帶羅盤
真是大開眼界!

再重申一次
我的餐廳既沒有舵也沒有帆
更沒有船長駐守
要改變行進方向是不可能的

但是
像被施了魔法一樣
窗外景色開始旋轉
波浪含蓄的白色水花
緩慢的上下起伏
沒有錯
餐廳在移動著
更正確地說
整家店滑行在海面上並正在轉換行進方向
那艘葡萄牙的商船也慢慢往左消失在視線中

所幸廚房沒有太大搖晃
熬煮著咖哩的火侯
一如往常維持在最佳狀態

舒服的律動
像是不小心陷入白日夢那般恍惚
就要迷濛之際
晃動從遊船切換到快艇
速度飆升衝刺
嚇得我整個人彈了起來

浪高到幾乎擋住了天空
映入眼底的藍比剛才海平面的色階來得深沉
擔心店內的酒
我環顧四周
好險櫃子仍穩穩地座落著

這刺激的撼動只維持一下子
感覺上是跳躍了時空
定下神看向窗外
咦 那不是剛剛那艘葡萄牙的卡拉克帆船嗎?
似乎舊了許多
連船員的肌膚也黝黑不少
但是他們的表情
完全不見剛剛的愁雲慘霧

滿足 充實 幸福 喜悅 調和 安心

還有什麼形容詞?
即使排列各種正面辭彙
都不足以描繪他們現在散發出來的光彩

發生什麼事了呢?
船身看上去像是經歷了一場浩瀚的大冒險
連帆布及船桅都有修補的痕跡
而且大家一定很長時間沒有回到陸地上
為什麼還能出現那樣炫目的表情呢?

抵不住好奇心
我問了博士

博士溫柔地答道:

「那些人,
克服心中的不安及恐懼
憑著自己的羅盤找到了新世界
已經不再受任何人事物的擺佈」


說完博士把羅盤收進口袋
目不轉睛地望著站在甲板上的少年
良久才走回座位

博士的話
還沒有完全理解到可以融會貫通
但我想總會慢慢消化
而不知哪來的靈感
我突然伸手摸了摸自己的口袋
竟然發現不應該出現在那的羅盤
真是奇了!

聽到鳥啼
我才意識到餐廳回到原本的森林中

博士在那之後只是靜靜地專心享受每道料理
好幾次脫口而出的「好吃」
對我而言就是最棒的讚美
不禁心頭暖乎乎的

我猜想
不管去到任何地方
博士都可以隨心所欲操作時間的流轉
只是吃飯時他一定會調回世間正常的擺動
細細品嘗味蕾的變化

也只有這般
東西才會美味
這是我身為大廚的自信與直覺

博士行禮道謝後便步出餐廳
瞥了一眼他的步伐
正小小地喧鬧著
就快要舞出一個節奏
掩飾不了溢出來的興奮和感動

真是一個奇妙的客人
讓人驚呼連連
比起博士
更適合稱他為魔法師

我的羅盤
指向何方呢?

iPhone 6s

無料メルマガ発行中
詳しくは「PROFILE」をご覧ください♡
不定期でオンラインお話会を開催します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

前の記事

FILM フィルム

次の記事

CHILDHOOD おばあちゃん家