4 TWINS 双生児


今日は朝から肌寒い霧雨が降っている
雨の日はいつも客足が悪い

と思ったら
ベルが鳴った

ドアが開いた瞬間
おしゃべりをしている人声が店内に漏れてきた

おうー珍しいグループ客か
オーナーは入り口のほうへ視線を向け

「いらっし…」

残りは喉の奥で途切れ
開いた口が塞がらないまま
オーナーは大きく息を吸って自分の目をこすった

普段あまり見る機会がない光景を目にしたからだ

入ってきたのは
一人のお客さんだ

いや、二人と言ったほうがいいのか
ん…やっぱり一人が相応しいかもしれない

というのも
そのお客さんは
体一つでありながら
首筋より上は
頭が二つある

結合双生児なのだ!

二人はしゃべりながら店に入ってきたのだ

驚いたが
オーナーはすぐ気を取り直して
いらっしゃいませを再度言った
さっき動揺した自分を少し恥じた

双生児はほかのお客さんと同じ
店内を見渡して
どこに座ろうか考えている様子

けれど
二人はなかなか合意がつかない
やがて喧嘩になった

お客さんは20代前半に見える女の子だけど
雰囲気はだいぶ違う

片方は明るく、ニコニコで可憐な感じで、髪の毛に淡いピンクのリボンをつけている。とても近づきやすい印象を受ける

もう片方は表情が暗く、細いメタルフレームの眼鏡をかけている。眉間に深いしわを寄せているのがはっきりと分かる。そして目つきもどこか冷たい感じがする

「日差しがあった窓際がいいわ」
「紫外線の影響知らないの?あらゆる老化を引き起こすからやだ」
「ゆっくり本を読みながらこの空間を味わいたいの」
「さっさと食べてから帰る。そもそもこういうオーガンニック系の料理が嫌い」
「店の方に失礼でしょう」
「はい出た!誰もあんたのその‘気遣い’を気にしていない。こっちがお金を出したお客さんだよ」

喧嘩の内容がだんだん脱線して
最終的にオーナーが間に入って
半分日差しに当たり、半分陰になるように
テーブルと椅子を動かした
そして、こっそり店の外へ行って
「営業中」の表示を「準備中」に変えた
この一組のお客さんに全集中するため

案の定
料理を決めるのにも時間がかかった

リボンの子は、シェフおすすめスペシャルを選びたいが
眼鏡の子はまず文字だけのメニューを見て苛立ち始めた

「こういう店は、シェフのおすすめを選んで間違いないわ」
「写真もないし、何が出てくるか分からないものはごめんだ!だからマックがいいと言ったでしょ」

延々と続いている討論を見て
オーナーはまた近づいて
味付けや食材、調理法について
メニューの最初のページから細かく説明した

そして、シェフおすすめスペシャルの内容を紹介している最中に
ふいに
眼鏡の子に中断された

「ピーマン食べられないっしょ」

オーナーのことを全く顧みず
眼鏡の子は自分の左側にいるリボンの子を頭で軽く触れて
皮肉げに言い出した

「そ、そんなことないわ」
リボンの子が急に顔を真っ赤にして否認した

ほー
オーナーは興味深く目の前のお客さんを見て
一つ提案をした
好みの食べ物と味付けをヒアリングして
それをベースに完全にオーダーメイドの料理を作る

リボンの子は、そんなわがままな行動はオーナーに迷惑をかけるから固く断ったが
眼鏡の子は声にこそ出さなかったが、この特別扱いを喜んでいるらしい。それで怒鳴ってリボンの子を黙らせて
オーナーの提案を受け入れた

台所に戻って
オーナーは手元のメモを見た

二人の性格が見えてくる

リボンの子のリストはわずか5行しかないのに対して
眼鏡の子はみっちり3ページ書いて、おおよそ4、50個あった

ただ
なんでしょう
どちらも腑に落ちない

フレンチの定番料理と
とにかく濃い味付けや脂っこいもの

他人に合わせすぎる子と
自分のことしか考えていない子

平均を求める安全傾向
極端を求める破滅傾向

オーナーは厨房をあちこち行き来している
ありったけの食材と調味料
数百の組み合わせを高速で脳内でシミュレーション
最高にマッチする料理を決めるのには
そんなに時間がかからなかった

料理を出した時
リボンの子はまだ申し訳なさそうな顔をしているが
眼鏡の子は待たされた不満を露骨に表している

しかし
二人とも一口食べると
表情が変わった
その一瞬
双子は区別ができないほど
身なりや気質、振る舞いなど
すべて似てくる

好みにぴったりの料理を出されたからなのか
二人は心を開いて
オーナーと雑談しはじめた

そこで知ったのは
このお客さんは双子でありながら
こうも性格が違うのは
もしかしたら血液と星座にヒントが潜んでいるかもしれない

AB型の双子座なんだって!

リボンの子の夢は
いつかプリンスチャーミングが自分のことを見つけて
憧れる自由世界へ連れて行ってくれること
きっとそこに幸せがあると信じている様子

眼鏡の子は
とにかく今の生活が嫌いで
早くお金を貯めて分離手術をしたい
そして何かすごいことをして
今まで自分たちを嘲笑った人たちをあっといわせる

このレストランの特徴
読んでいるみなさま、まだ覚えている?
そう
時間の流れが自由なところ

人によって早送りしたり、逆戻りしたりするが
とにかくレストランにいる間は
意志と関係なく
全員が自由に時間軸を旅する

この結合双生児も例外ではない

ただ
オーナーの予想に反して
これまたびっくりした

変化していく二人の姿が見えると思ったら
リボンの子と眼鏡の子の輪郭がだんだんぼやけて重なっていって
やがて頭が一つになった

とても優雅でしなやかな大人女性姿に変身
時間は先に進んだようだ
女性の一挙手一投足
すべて心地よい余裕と自信を放っている
言語非言語あらゆる面で上品な空気が漂い
傲慢など一切れも感じない

これは将来、手術が成功して
どちらかが消えたというより
二人が統合して
中庸の地点に辿り着いてはじめて
本来の自分が出た感じだね

オーナーの料理が
お互いの心底に眠った本当の欲望を呼び覚まして
ありのままの自分でいる時の爽快感を味わい
今までの抑圧をちょっと解放したからかな

結局席から立って店を出るまで
そのお客さんはずっとこの大人女性の姿だった

一人になったオーナーはお皿を下げる前に
ちょっと考え事をした

うむー
どうももやもやが胸辺りに蟠る

さっきお客さんは自分がAB型の双子座と言った
ということは
本当は四人いるはずだ

あとの二人は?

好奇心に駆られて
オーナーはお客さんの後を追って店を出て行った

雨が止んだ

もう結構遠くまで行ってしまったお客様の後ろ姿しか見えないが
ここでミステリー定番の伏線を残しておこう

輝く夕日によってアスファルトに描き出された影は
四人だった

ほかの二人はどんな性格なのか
まあまたいろいろ葛藤や抵抗が起きるでしょう
だけどなんとなく今度は仲良くしていきそうな気がする

えっなんで知ってるのかって

オーナーの勘ってやつ

あとは
さっき見たお客さんの後ろ姿は
話す内容は聞こえなかったが
店に入った頃のギシギシではなくて
とても和む感じだった

検証は
そのお客さんがまたこの店に来た時に聞いてみよう

今回も奇妙なお客さんだったなー

さぁ今日はもう終わりにしよう
頭が狂ってしまいそうだから

ビールを飲みながら、片付けを進めるオーナーの手がまた止まった
以前いらっしゃった多重人格のお客さんをふと思い出した

それはそれは大変だった

食事の間だけで七人の人格が出てきて、全員の好みが違う
一口食べたとたんほかの人格が現れてきて
すぐ席替えして注文し直した
空間も時間も目まぐるしく回転して
オーナーの頭がぐらぐらして足元もうまく立てない羽目に
もうてんてこまいの一日だった

それはまたいつかの機会で話すことにしよう



「4 雙胞胎」

今天從清晨就開始下著刺骨的細雨
雨天時上門的客人並不多

正當這麼想著的時候
有人推門帶動繫在門扉上的鈴鐺
叮鈴清響

一瞬間
說話聲隨著拉開的門傳了進來

〝真難得來了團體客〞
老闆往出口望去

「歡迎…!」

剩餘的話梗在喉嚨中
老闆詫異的心情表現在臉上
他瞪大眼盯著進門的客人

實在是平常不容易遇見的景色

進入店內的是一位客人
不對,應該說是兩位
哎呀,或許還是稱一位比較恰當

之所以這麼說
是因為這位客人
從脖子以上竟有兩顆頭顱

這是位連體雙胞胎呀!

方才是雙胞胎邊聊天邊踏入店內
於是讓老闆以為是團體客

雖然吃驚
但老闆很快地平撫心情
重新說了「歡迎光臨」
對自己剛才的舉動有些不好意思

雙胞胎和其他客人一樣
一進店內便開始環顧四周
尋找喜歡的位子

但這兩人似乎意見喬不攏
說話聲大了起來
慢慢演變成爭執

老闆在一旁靜候
眼前的客人看上去是約20歲出頭的女孩子
雖說是雙胞胎
但氛圍完全不同

其中一位樂觀開朗,笑臉盈盈的模樣很討喜。頭髮上繫著淡粉紅色的蝴蝶結,整體看起來平易近人。

而另一位表情冷峻,細金屬框的眼鏡背後透露出銳利眼神。眉間有著深深的皺紋,給予人一種生人勿近的窒息感。

「坐窗邊採光好」
「我才不要,妳不知道紫外線會造成肌膚老化嗎?」
「飯後我想多待一會兒,靜靜看書,享受一下悠閒的午後」
「不要!吃完我就要回家。我根本就不喜歡這種有機飲食的餐廳」
「這樣很沒禮貌」
「妳又來了。根本沒人在意妳自以為的“貼心”。我們可是出錢的客人吶」

隨著吵架的內容越來越偏離主題
老闆決定介入
移動店內桌椅
幫她們安排了一處一半有日光一半位在陰影處的位子
接著老闆走到店外
將營業中的牌子翻到準備中
決定將精力好好集中在這組客人上

如老闆預料
雙胞胎在點餐時也花了不少時間

繫蝴蝶結的女孩想點主廚今日特餐
但戴眼鏡的女孩對著沒有圖片的菜單就是一陣發怒

「像這種風格獨特的店就應該點主廚推薦,一定沒錯」
「連張照片都沒有,我哪知道出來的會是什麼鬼東西!就跟妳說我想吃麥當勞!簡單又方便」

在爭吵又要開始前
老闆主動上前解釋每一道料理
包括使用的食材及調味方式
鉅細靡遺地解說著

「哈,妳不是不敢吃青椒?」

正當老闆講解到主廚今日特餐時
戴眼睛的女孩直接打斷老闆
用頭輕敲位在自己左邊的蝴蝶結女孩
充滿諷刺地說
對於打斷別人講話沒有一絲抱歉

「沒、才沒這回事!」
繫蝴蝶結的女孩紅著臉駁斥道

老闆饒富興致地看著這組客人
思忖了一下提出一個建議
讓女孩們分別說出自己喜歡的料理
口味、食材什麼都行
然後老闆再依此客製一份套餐

繫蝴蝶結的女孩認為這屬於奧客行為會麻煩到老闆,趕緊揮手拒絕
但戴眼鏡的女孩嘴上不說,臉上卻透露出得意的表情,似乎很享受這種特殊待遇。接著她便大聲斥喝讓繫蝴蝶結的女孩閉嘴
於是兩人接受了老闆的提議

回到廚房
老闆看著手中的紙條
客人的個性總是可以從口味及用餐習慣中窺見一二

繫蝴蝶結的女孩的清單只有短短五行
但戴眼鏡的女孩卻洋洋灑灑寫了三大頁,約4-50項

只是老闆心中還是有個梗卡在那
總覺得哪裡不踏實

一邊是法式料理的王道
一邊是油炸重鹹口味

過於迎合他人
完全自我主義

追求安全牌的平均值
追求毀滅的極端個性

這對雙胞胎的對比太強烈了

老闆在廚房裡踱步
看著所有食材及調味料
腦中高速模擬出上百道料理
在找出最佳搭配前並沒花太多時間

上菜時
繫蝴蝶結的女孩還是滿臉歉容
戴眼鏡的女孩則是將等待的不耐露骨地表現出來

但是
當兩人吃了第一口後
彷彿啟動了什麼機關
一瞬間
分不清誰是誰
她們的神情、氣質、舉動等
都相似起來

也許是料理打動了她們的心扉
竟然開始和老闆閒聊
氣氛一下子愉快不少

從談話中得知了一些關於雙胞胎的訊息
這兩人會這麼不同
也許和星座血型有關

她們是AB型的雙子座

繫蝴蝶結的女孩夢想著,有一天,會有一個特別的人出現在她的生命裡,帶她前往憧憬的自由國度,過上幸福的日子。
而戴眼鏡的女孩則是非常厭惡目前的生活,她想趕快存錢做分離手術。然後做一些偉大的事,讓嘲笑過她們的人跌破眼鏡

各位看官,還記得這間餐廳的特色嗎?
是的
這裡的時間流向是自由的

有人快轉、有人倒轉
無關意識
每位客人都將在時間軸上自在旅行

而這位連體雙胞胎也不例外

只是和老闆預想的不同
雙胞胎並非是各自變化
而是輪廓慢慢模糊重疊
最後頭顱竟然結合成一個

一位優雅大方的成熟女性出現在眼前
看來她們的時間是往前跑了

這位女性舉手投之間充滿氣質
神采亮麗飛揚
帶有舒服的自信及餘裕
不含一丁點兒傲慢

與其說這表示雙胞胎將來手術成功失去某一方
感覺更像是兩人的統整
彼此抵達了中庸的軸心
找回真正的自己

老闆的料理或許喚醒她們心底沉睡的慾望
體會到做自己的暢快
解放了一直以來的壓抑

一直到最後客人起身離去前
都是這成熟女性的姿態

送走客人後
剛要準備收拾桌上時
老闆又陷入沉思

客人說自己是AB型的雙子座
所以應該有四種個性呀!

那其他兩人呢?

被好奇心驅使
老闆跟著追出去
雙胞胎已經走遠了

在此留個懸疑片中經典的伏筆

天空放晴,夕陽的餘暉襯托
映在柏油路上的
是四個人的影子!

不知道另外兩人是怎樣的個性呢?

或許還是會出現各種掙扎排斥反應
但總覺得她們這次會相處融洽

為什麼知道?

這是老闆做這行的直覺

加上
剛剛客人的背影
雖然聽不見她們對話的內容
但氣氛已不若剛踏入餐廳時的緊張
反而充滿和諧

如果哪一天她們再度光臨
到時便能看看這預感準不準確

今天的客人也是令人印象深刻呢!

老闆想著
決定今日就做到這裡
準備關門休息

一邊小酌一邊整理廚房
老闆回憶起一位有著多重人格的客人

那是非常手忙腳亂的一天
光是用餐途中就出現7種人格
大家的喜好不盡相同
一出現便重新點餐換位子

時間空間快速跳躍旋轉
老闆看著都眼花
腳也都站不穩了

有機會再來說說這位客人的故事吧

hint from American Horror Story S4: Freak Show

Sony A7ⅱ

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